タケオの闘病生活 Act5  〜手術終了〜

闘病生活 Act5  〜手術終了〜


みなさん、お久しぶりです。タケオ(仮名)です。
偽名が突然の出来事で、最終回を書き上げる事ができなくなり、
大変申し訳無いと思っている所存です。
しかし、ここで終わらせるわけにはいかないので、
私が再びペンを握る事に致しました。


では、最終回をご覧下さい。





〜前回のあらすじ〜


手術に関する様々な検査を受け、
私はついに手術を行う事になり手術室に入った。


手術方法は、胸部切開、その後肋骨を切り開き、
心臓の弁を全て除去し、金属弁に置き換える、
”金属弁置き換え方”で行う・・・。



では、感動の最終回、どうぞご覧下さい。



・・・・・・・私はベッドのまま手術室に向かっている・・・。
実になんとも言えない緊張感で、手にはじっとりと汗が滲んでいた。
成功率はかなり高いらしい。


『しかし・・・。』
やはり、最悪の結末を想像してしまう自分もいた。


ベッドは着々と手術室に向かっている・・・。
もう引き返す事は出来ない・・・。
覚悟を決めた私の目の前に、ついに手術室が現れた。
銀色に輝くその扉は、冷たく光輝いていた。


私を運んでいるベッドは、全くのためらいもなく、その”冷たい扉”をこじ開けた。


手術室の中には、すでに数人のドクターと看護師が待ち構えている。
私の体が数人のドクターの手により、ベッドから手術台へと移動された。


私はさらなる緊張が高まった瞳で、部屋の中をグルリと見渡した。

すぐ隣には私の心電図を確認する為の機材が設置されていた。
その反対側には、手術をする為に使用するメスや、電気ドリル・・・。

やはり私が一番目をひかれたのは、ドラマ等でしか見た事のない、
患部を照らし続ける大きな照明であった。

まだ光は灯っていないはずなのに、異様な輝きをかもし出していた・・・。



『コレカラワタシハ、ナニヲサレル?』



突然私に生まれた激しい恐怖。
その恐怖に怯えた私の耳に、ドクターの非情な言葉を聞く事になってしまった。


「手術を開始します。」
この一言で、私の緊張はピークになった。


ドクターは私の心を落ち着かせる為に、安心感を与える言葉をいろいろと言ってくれた。


しかし、私の緊張は簡単にはほぐれなかった。
その緊張感を持ったまま、ついに私の口に酸素マスクが取りつけられた。


『ついに始まる・・・。』
私は静かに瞳を閉じた。

酸素マスクから出る麻酔に、私の意識は次第に薄くなっていった。





・・・・・私は夢を見ていた・・・。


・・・・・私はとても深く、暗い海の中にいる・・・。


海の中にいるはずなのに、不思議と苦しさは感じなかった。
むしろ、安らぎさえ感じられた。
   

・・・・・私の体は海の底へと、ゆっくりゆっくりと沈んでいた・・・。


・・・・・私は、今何をしているのだろう・・・?
・・・・・私はどこへ行くのだろう・・・?

いろいろな不安が頭の中をよぎっていた。


しかし、その不安も、いつからかどうでもよくなっていた自分がいた・・・。

《このまま沈み続ければ楽になれるのだろうか・・・?》


今までの苦しみや悲しい出来事、嫌な思い出を全て忘れさせてくれるのだろうか・・・?  
私は次第に、このまま海の底に沈み続ける事を願っていた。




「・・・な!」

私は何やら人の声が聞こえたような気がした。

「・・・くな!!」

次第にその”声”は、はっきりとしたものとなった。

「行くな!!行くな!!」

はっきりと聞こえると共に、”声”は大きく、そして何人もの”声”となった。

私はその”声”のする方に耳を傾けた・・・。
次の瞬間、私は今まで安らぎさえ感じられた海の中で、急に息苦しくなった!


「息が出来ない!!苦しい!!誰か助けて!!」
私は声にならない声で、叫び続けていた。
しかし口から出た言葉は、泡となって水面に消えていくばかりだった。   
   
『もう、駄目だ・・・。』
あきらめかけ、ただただ海の底に沈んでいくばかりの私の体が、急に止まった。
まるで誰かに支えられている様に・・・。

私はふと周りに人の気配を感じ、あたりを見まわした。


私の体を沢山の人達が必死に支えてくれているのだ!

友人・先輩・後輩、そして兄弟、両親・・・。

みんなが必死になって支えていてくれていたのだ。

それを見た私の目からは、熱いくらいの涙が溢れ、頬を伝っていた。

こうやって私はみんなに助けられ、そして励まされている!
みんなが私の元気な姿を待ってくれている!


・・・戻ろう・・・。みんなの所へ・・・。




・・・・・私は夢を見ていた・・・。



誰かが私の名前を呼んでいる・・・。

   
私は目を覚ました。

そう、手術は成功し、私は無事だった。

目の前には心配そうに私を覗き込む、母の姿があった。


手術は成功した。


私は痛みをこらえ、おもむろに手術の跡を見た。

胸はしっかりと縫合されてはいるが、うっすらと血が滲んでいる・・・。


確かに骨を切り開かれており、激しい痛みもある・・・。


しかし、その痛みもさほど苦にはならなかった。


《みんなが私の事を心配してくれている》


それが何よりの、私の痛みを押さえてくれる、”痛み止め”であったからだ・・・。


           
                                             完

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長い間、私の話しに付き合って頂けた方々に、深くお礼を言います。

ありがとうございました。

確かに6時間にも及ぶ大手術で、術後もかなり大変でした。

しかしながら、こうして私は以前よりも元気で仕事をしています。

ハマオさんも病人ですが、そんな事はみじんも見せずに頑張っています。

私の尊敬する一人です。

これからもこのブログ共々、どうか宜しくお願いします。


最後に一言・・・。
もしも、皆さんが望むなら、”闘病日記番外編”でも書いちゃおっかな〜・・・。

では、これにて”闘病日記”を終了させて頂きます。

提供は、タケオ(仮名)でした。