みなさん、タケオです。

闘病生活の新作を書いてる時間がなかなか取れません!
本当に申し訳ありません!
仕事が忙し過ぎて、新作を考えてる余裕がないのです・・・。
なにせ、東和みたいないろいろな看板を扱う大企業ともなると、なお更です!



と言う訳で、今回は短編小説 「ムロヤンの母」
をお送りします!
みなさん、ムロヤン母の活躍を、涙してご覧下さい。



・・・当時の出来事を、ムロヤンはこう語る・・・



「あれは本当にすごい出来事だった・・・。
 母の体から白いオーラのような物が見えたくらいだから・・・。」



それはまだ残暑厳しい夏の午後だった・・・。
窓から外を見渡すと、半そで姿でしきりに顔からあふれ出る汗をぬぐう、
サラリーマン達の姿が目に飛び込んで来た。
とうに昼は過ぎているはずなのに、耳をつんざく程のセミの鳴き声が辺り一面を覆い尽くしていた。

額からは汗が、まるで滝のようにあふれ出てくる。
日中真夏の太陽に照らされ続けたアスファルトには、まだ熱が残っているらしく、
外で老婆が水をまいているが、すぐにその水は蒸発してしまっていた。

 

 ムロヤン、当時6歳の出来事だった・・・。



「お母さん、遅いね〜。私、お腹空いちゃった。」
窓から母の帰りを待つ僕に、妹が声をかけてきた。


「もうすぐ帰って来るよ。もう少し待ってよ。」
僕は、空腹でややふてくされていた妹に、優しい笑みで答えた。


「わかった・・・。おりこうさんに待ってる。」
僕の言葉に完全に納得できてなさそうな態度で、妹が返事をした。


それは仕方のない事だった。


妹の名は”かおり(仮名)先月5歳の誕生日を迎えた。まだ母が恋しい年齢なのだから。


妹は僕が窓の外ばかり見ていて、自分の相手をしてもらえないと判断したのか、
スタスタとどこかに行ってしまった。


僕はそんな妹を尻目に、再び窓の外に目をやった。



それから、ほんの数分の事だった・・・。



「お兄ちゃーん!!出れないよー!!」
どこからか妹の悲鳴に似た声を僕は聞いたのだった!


僕はとっさに声のする方へ走った。


「かおりー!どこにいるのー!」
僕は部屋中をかけまわって妹の姿を探した。


「お兄ちゃーん!ここだよー!」
妹の声は、しだいに大きくなっていた。
僕はひたすら声の聞こえる方に向かった。


たどり着いた所・・・。


それはお風呂場だった!
妹の声はお風呂場から聞こえていたのだ。
どうやら遊び半分でお風呂場に入り、自分でカギをかけてしまったらしい。


「かおりー!カギをあけてよー!」
僕はどうしたらいいかわからず、戸惑いの声で中にいる妹に声をかけた。


「わからないよー!お兄ちゃーん!」
妹は自分でカギをかけたまではいいが、開け方がわからなくなってしまったらしい。
僕はただ、中にいる妹に声をかける事しかできなかった。


「ウエーン!お母さーん!お母さーん!」
妹は次第に恐怖で悲鳴に近い声をあげ始めた。


と、その時。


ピンポ〜ン・・・。


玄関のチャイムが鳴った。

僕は妹に一声かけると、玄関へ向かった。


扉を開けると、隣の部屋に住んでいる山本さんが、妹の叫び声に気づいて様子を見に来てくれたのだった。
僕は妹の事を話すと、山本さんはお風呂場に向かった。


「かおりちゃん!大丈夫かい?自分でカギを開けれるかい?」
山本さんは、妹を落ち着かせるように、優しい声で問い掛けた。

・・・しかし、完全にパニックに陥っていた妹には、山本さんの声も届かなかった。
ひたすら、「お母さん、お母さん」と繰り返すばかりだった。


その時、僕の背後から聞き覚えのある男性と女性の声が聞こえた。


後ろを振り返ると、この部屋の一つ上の階に住んでいる大浜さん夫婦だった。


妹の声は、上下階までも響いている様子だ。


「警察に連絡するか?」
大浜さん夫婦は、とっさに状況を把握したらしく、警察への連絡を促した。


当時まだ幼い僕は、ただ妹の無事を祈る事しか出来なかった・・・。


大浜さん夫婦が、警察に電話をかけようと受話器を握った、まさにその時!
玄関から人影が現れた。


僕はその人影を確認した途端、今までの緊張の糸がプッツリと切れ、
その人影にしがみつきながら大声で泣き出してしまっていた。


なぜなら、その人影こそ僕の母であったからだ。


母はただがむしゃらに泣き続ける僕の頭を優しく撫で、笑顔で一言僕にこう言った。


もう、大丈夫よ・・・。と。


そして僕を含む回りの人達に、少し離れるように告げると、お風呂場の扉の前に立った。


お風呂場の中では、妹が声をからして泣き続けている。


「何をする気ですか?」
その様子に疑問を抱いた山本さんが、母に声をかけた。


しかし母は、その問いかけに笑顔で答えるだけだった・・・。


僕はその母の笑顔には、



・・・心配要りません。娘は私が助けます。



という意味が込められているように感じた。


僕は溢れ出る涙を服の袖で拭き取ると、母の様子をじっと見詰めていた。


母は静かに目を閉じた。


そして次の瞬間、僕の目の前に信じられない映像が映し出された。


母の口から発せられる激しい気合と共に、母の右腕が一直線にお風呂場のガラスに向かったのであった!



バリーン!!



ガラスの割れる音が辺り一面に響き渡り、破片があちらこちらに飛び散った。
母はなんと、かなり分厚いお風呂場のガラスを、素手で割ったのであった!


そのまま割れたお風呂場の扉から手を入れた母は、カギを開けた。


中から涙で顔をグシャグシャにした妹が、母の顔を見て今まで以上に激しく泣き出した。
よほど心細かったのであろう・・・。



こうして母の活躍により、妹は無事救出された。
母は手に傷を負ったが、大事には居たらなかった。



僕は母の偉大さを初めて体験した、6歳の夏の暑い日の出来事だった・・・。       完



後書き
この小説は、タケオの可愛い後輩、ムロヤンの実際に体験した出来事です。
ムロヤン以外の登場人物の名称は、全て仮名ですが、ムロヤンからの体験談を、
余す事無く文章にしました。

みなさん、今後ともこのプログをご愛読下さい。

タケオでした。